PFAS(有機フッ素化合物)とは?人体への影響や規制内容、対処方法を紹介

PFAS(有機フッ素化合物)は、レインコートや調理器具のコーティングなど身近な製品に使われてきました。

しかし、近年ではPFASの一種であるPFOS・PFOAの特性は、環境や人体への影響を及ぼす可能性があると指摘され、管理体制や規制の強化がされています。企業はPFASへの対応が求められるため、準備や情報収集を行うことが大切です。

本記事では、PFASとは何か、PFASに関する世界や国内の動向、今後の規制の見通しを紹介します。PFASの規制に対応している企業の取り組みも紹介するため、ぜひ参考にしてください。




PFASとは

PFAS(ピーファス)とは、有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称です。炭素とフッ素が結合した分子構造を持つ化合物を「有機フッ素化合物」と呼びます。

PFASは約1万2,000種類以上の物質があるとされており、なかでもPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、幅広い用途で使われてきました。


PFOS・PFOAとの違い

PFOS・PFOAはPFASの一種です。PFOS・PFOAは、「耐水性」「耐油性」「耐熱性」などの特性があり、様々な用途で使われてきました。PFOS・PFOAの正式名称や主な用途は以下のとおりです。


PFASが問題視される背景

PFASが問題視される理由は、PFOSやPFOAの性質が人体や動物への健康リスクを高めることや、環境汚染につながるおそれがあることが挙げられます。

2000年代初頭まで、PFOSやPFOAは身の回りの製品を作るために、様々な工業で利用されていました。2009年以降、PFOSやPFOAの性質がもたらす懸念から国際的に規制が進み、多くの国で製造・輸入などが禁止されています。現在、日本国内でも新たに作られることは原則ありません。

PFOSやPFOAは、難分解性、高蓄積性、長距離移動性と呼ばれる性質を持っています。

PFOSやPFOAは上記の性質により、規制されている現在でも環境中に残留しています。

日本各地で調査が行われた結果、東京や大阪、沖縄などの地域でPFOSやPFOAによる水の汚染が起きていることがわかりました。

令和4年度は、16都府県111地点で暫定基準値を超える数値が記録されています。

環境省では、PFASを優先的にリスク管理するべき有害化学物質と位置付け、実態調査や試験研究に取り組んでいます。


PFASが人体に及ぼす影響

2009年以降に行われた動物実験で、PFASは動物の肝臓機能や体重などに影響を及ぼすことが報告されました。一方、人に対しては以下の影響を及ぼすことが指摘されています。

  • 免疫系
  • 血清中コレステロール
  • 肝臓
  • 生殖
  • 腎臓
  • 精巣
  • 甲状腺

現時点で、どの程度の量や濃度が人体に影響を及ぼすかは明らかになっていませんが、2023年12月にIARC(国際がん研究機関)より、PFOS・PFOAの発がん性評価の結果が公表されました。PFOSはグループ2Bに、PFOAはグループ1に分類されています。それぞれのグループの概要は以下のとおりです。

PFOS・PFOAに関するIARCの発がん性分類結果の概要は以下のとおりです。


PFASに関する国際的な規制動向

PFASの規制はヨーロッパやアメリカなどの先進国で進んでおり、日本は追従する形で段階的に規制を強化しています。

  • PFASに関する国際的な規約や条約
  • PFASに関する日本国内の規制や対応方針

上記の2つに分けてPFASの動向を紹介します。


PFASに関する国際的な規制や条約

PFASに関する国際的な規制や条約の動向は以下のとおりです。

2025年現在もPFASに関する審議が行われており、PFASに関する規制が今後も強化されることが予想されます。


PFASに関する日本国内の規制や対応方針

日本国内でも国際的な情勢を踏まえ、PFASに関する必要な措置の検討や規制を進めています。

日本はヨーロッパやアメリカに比べて規制が遅れていると指摘されており、PFASに関する規制を国際基準に近づけられるよう、今後はさらに規制が強化されるでしょう。



PFAS(PFOS・PFOA)基準値の今後

日本国内では、水道水や地下水などにPFOS・PFOAの目標値(暫定基準値)が設定されています。内容は以下のとおりです。

環境省と国土交通省が共同で実施した「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査」で、2020〜2024年度にかけて2,227事業を対象に調査を行いました。

2020〜2023年度の間に行われた水道水調査では、14事業で目標値(暫定基準値)を超えていましたが、2024年9月30日時点の調査結果では全事業で目標値を下回っています。

環境省は2026年4月の施行を目途に水道法の省令を改正し、水質基準項目に「PFOS」と「PFOA」を加える方針を固めています。水道法が改正されると、水道事業者は定期的な水質検査の実施や基準値を超えた場合の原因特定・改善措置が義務付けられます。

水道業者や飲料製品を製造する企業は動向を注視する他、規制の強化に備えて自主的に対応する必要がある点を押さえておきましょう。



PFASの規制に関する企業の取り組み

日本国内でPFASの一部(PFOSやPFOA)の製造、輸入などは禁止されているため、新たに作られることはありません。

しかし、過去にはPFOSやPFOAが多く使用されていたため、環境中や製品に残っている可能性があり、企業はPFASの規制に準拠した取り組みが求められています。具体的な取り組みの一例は以下です。

  • 代替材料の開発と導入
  • サプライチェーン全体での管理と見直し
  • 規制や社会の動向の把握と適応
  • PFASの浄水処理技術の情報収集と把握

それぞれ詳しく紹介します。


代替材料の開発と導入

PFASの環境や人体への影響を踏まえ、企業は代替材料の開発と導入の推進が急務ですが、PFASは優れた特性を持つ素材のため、代替品を探すことが難しい場合があります。

しかし、代替品の開発は進んでいるため、積極的に情報収集を行うことが大切です。例えば、食品包装やコーティング剤では、フッ素樹脂を使わない耐油・撥油・撥水技術の開発が進んでおり、代替品として使用が進められています。

また、撥水性を持つシリコン系コーティングや植物由来の耐油素材なども代替品として開発されています。


サプライチェーン全体での管理と見直し

PFASは企業単体の規制努力だけでなく、サプライチェーン全体での管理が求められます。サプライチェーンがPFASの規制に対応しないと、自社の企業リスクが高まり、取引先の見直しも検討しなければなりません。

大手企業では、サプライチェーン全体にPFASの使用を削減・排除するよう要求した事例もあります。自社の取り組みに加え、サプライチェーン全体での連携や管理も行いましょう。


規制や社会の動向の把握と適応

現在、PFASが及ぼす人体への影響に関する調査や管理体制の整備などが行われている段階です。そのため、PFASの規制は今後強化されることが予想されます。

例えば、食品業界では、2023年2月に食品安全委員会が「有機フッ素化合物(PFAS)ワーキンググループ」を設立し、水質に関する暫定目標値を基に人体への影響評価を行いました。評価の結果は以下のとおりです。

結果を踏まえ、水質の暫定値の取り扱いが検討されており、2026年4月からは基準値を超えた場合の改善の対応が義務化される見通しです。企業はPFASの最新の規制動向を把握するとともに、適宜対応する必要があります。

また、企業は法律の遵守だけではなく、PFASは人体への影響を及ぼすおそれがあるため、社会的な風潮としてPFASへの対応が求められるでしょう。


PFASの浄水処理技術の情報収集と把握

企業はPFASの規制に対応する上で、PFASの浄水処理技術の情報収集と把握をすることも大切です。水道のPFASに関する浄水処理技術には、様々なものがあります。以下は一例です。

  • 粒状活性炭(GAC)処理
  • 粉末活性炭(PAC)処理
  • イオン交換処理
  • 高圧膜処理(逆浸透膜処理、ナノろ過膜処理)

技術により、PFASの除去率やコストが異なります。PFASの処理技術の研究・開発は現在も進められているため、企業は最新の情報を収集し、コストや性能を比較して活用することが大切です。



PFASに関する飲料メーカーの対応事例

PFASは人体に影響を及ぼすおそれがあるため、特に飲み物や食べ物に影響がないか気になるところです。

2025年3月時点では、PFASに関する目標値(暫定基準値)は努力義務であり強制力はありませんが、日本国内ではPFOS・PFOAの合算値を1Lあたり50ng以下と設定しています。

しかし、消費者に安全性を伝えるため、大手飲料メーカーは自社もしくは外部機関でPFASの検査・分析を行い、暫定基準値をクリアしていることを自社ホームページに公表しています。

飲料水1Lあたり4ng以下と、アメリカの厳しい基準をクリアしている飲料メーカーや、分析機器が検出できる限界値を下回っていることを示している飲料メーカーもあります。

飲料や食品を扱う企業では、消費者や取引先からの信頼を得るために調査の実施頻度や具体的な数値を示すなどの対応をとることが大切です。



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■ドリンクジャパン 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ



最新情報を収集してPFASの規制強化に備えよう

PFASとは有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称です。なかでもPFOS・PFOAは環境や人体に影響を及ぼすとされ、世界的に規制が厳しくなっています。

日本では水道水に含まれるPFOSおよびPFOAの暫定基準値が定められていますが、今後は法改正も含め、規制が強化される見通しです。企業はPFASの規制に対応するため、管理体制の強化や代替品の開発・導入を行う必要があります。

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■ドリンクジャパン 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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