【食品・飲料業界】OEMの成功事例・具体例を紹介!導入メリット・デメリットも解説

OEMとは、自社に生産設備がなくても新商品の開発・製造を行える生産方式です。有効活用することで商品の開発・製造コストを削減しつつ、迅速に製品を市場投入できます。

本記事では、食品・飲料業界を例に、OEMの成功事例や具体例、OEMを導入するメリット・デメリットを紹介します。OEMの導入を成功させるためのポイントも紹介するため、商品の開発や製造に伴い、OEMの活用を検討している方はぜひ参考にしてください。




そもそも「OEM」とは?

OEMとは、Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)の略称です。委託者のブランドで製品を生産することをさし、食品、飲料業界や化粧品業界、アパレル業界など、様々な業界で活用されています。

OEMで生産することを「OEM生産」、OEMを受注しているメーカーを「OEMメーカー」と呼びます。OEMの生産方式は大きく分けて2種類あります。OEMメーカーが企画から生産まで行う方式と、OEMメーカーに製造のみ委託する方式です。

OEMについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。

▶関連記事:OEMとは?意味やODMとの違いからメリット・デメリットまでわかりやすく解説!


OEMの成功事例・具体例|食品・飲料業界

OEMは様々な業界で活用されている生産方式です。以下では、食品・飲料業界の成功事例や具体例を紹介します。

  1. 食品メーカーの事例
  2. 飲料メーカーの事例
  3. コンビニやスーパーの事例(PB商品)

OEMを活用した商品の開発・製造を検討している企業の方は参考にしてください。


1.食品メーカーの事例

食品業界では、その土地の名産品(果物や野菜など)を活用した独自性のあるドライフーズをOEMで製造して販売するメーカーや、小ロット生産を活用して業務用商品を家庭用商品として販売するメーカーなどがあります。

OEMメーカーは特定の製品(カレーやドライフーズ、飲料など)に特化しているケースも多く、自社の製品に適したOEMメーカーを選ぶことでクオリティの高い商品の製造が可能です。

小ロット生産を活用すれば、売れ行きを見ながら注文数を調整できる他、試供品などのテストも行えるため、リスクを抑えた商品開発ができます。

その他、自社で商品開発・製造する手間を省くため、OEMを活用している大手食品メーカーも少なくありません。自社に生産設備やアイデアがなくても柔軟に商品の開発・製造ができる点は、OEMの大きなメリットです。


2.飲料メーカーの事例

飲料業界でもOEMは活用されています。OEMで製造される飲料は、クラフトビールや牛乳、ジュース、お茶、水など様々です。

近年では国内外で人気のクラフトジンを製造するOEMメーカーもあります。コンビニやスーパーで販売されるプライベートブランド(PB)飲料の他、名産品を使用した飲料や独自の製法、こだわりを込めた飲料もOEMで製造される傾向にあります。

飲料の小ロット生産に対応しているOEMメーカーも多いため、サンプルやノベルティの製造にも適しています。

飲料のOEMの例であるクラフトジンについては以下の記事で詳しく紹介しているため、興味がある方はぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:クラフトジンとは?ジンとの違いや市場動向、魅力や製造方法を紹介


3.コンビニやスーパーの事例(PB商品)

コンビニやスーパーで販売されている食品や飲料のなかには、OEMで開発・製造されている商品が多く見受けられます。特にプライベートブランド(PB)として販売されている商品の多くはOEMで製造された商品です。

例えば、以下のPBはOEMで製造されています。

  • セブン&アイ・ホールディングス「セブンプレミアム」
  • ローソン「ウチカフェ」
  • イオン「トップバリュ」
  • ドン・キホーテ「情熱価格」

OEMでPB商品を開発・製造する大きなメリットは、OEMメーカーへの大量発注により製造コストを抑えて消費者に安く提供できる点です。自社のブランドのためパッケージの簡素化や広告費の削減なども行いやすく、一般的な商品に比べて安い価格で提供されています。

PB商品についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:PB(プライベートブランド)商品とは?メリット・デメリットや成功させるポイントを解説


OEMで商品を開発・製造するメリット

OEMで商品を開発・製造する主なメリットは以下のとおりです。

※OEMメーカーの製造ロット次第によります。

通常、自社で工場を建設して設備を整える場合は大規模な資金が必要です。加えて食品業界では、保健所の許可(食品製造業)を取得しないと食品の製造ができません。OEMメーカーに製造を依頼すれば、自社で許可の取得や生産設備の用意をする必要がないため、初期投資や業務負担を大幅に削減できます。

また、商品開発には、市場調査や設計、試作品の製作、品質テストなど、多くの手間と時間がかかります。開発をOEMメーカーに任せれば、自社で開発に必要なリソースを割く必要がなくなり、企業はマーケティングや営業、ブランド構築などの重要な業務に集中できます。限られたリソースを効率活用する必要がある規模の小さい企業やスタートアップ企業にとっても、OEMは有効な手段でしょう。

小ロット生産(50〜200kgなど、比較的少ない単位での生産)に対応しているOEMメーカーに依頼すれば、市場の需要や販売数にあわせた適切な生産が可能になります。売れ残りや廃棄ロスのリスク、過剰な在庫を抱えるリスクを抑えつつ商品の販売が可能です。



OEMで商品を開発・製造するデメリット

OEMを検討する際は、以下のデメリットも理解しておくことが大切です。

OEMを利用して商品を開発・製造する場合、製造の大部分がOEMメーカーに依存するため、自社内の技術は成長しません。独自の製造能力の確立が難しくなる他、技術で他の事業者と差別化を図ることは難しくなるでしょう。

また、製造過程はOEMメーカーに委託されるため、自社が直接製造に携わることができず、製造による利益の向上を期待できません。委託側はOEMメーカーが設定する価格に応じて製造費用を支払います。費用にはOEMメーカーへのマージンが含まれているため、最終的な利益率は自社製造を想定した場合よりも低くなる可能性があります。

さらに、委託先が競合になるリスクがある点もデメリットです。OEMメーカーに製造を依頼することは、自社製品の独自性や開発ノウハウの開示につながります。将来的にOEMメーカーが自社で考案した売れ筋商品に似た商品を独自ブランドで販売したり、依頼した製品の製造に応用したりして、競合化する可能性も否定できません。



OEMの導入を成功させるためのポイント

OEMを成功させるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 目的やターゲットを明確にする
  • 複数のOEM先を比較する
  • 契約条件を明確にする
  • 品質管理体制を確認する
  • サンプルの作成・小ロット開発からはじめる

食品のOEMについて、詳しくは以下の記事をあわせてご覧ください。

▶︎関連記事:食品OEMの費用相場はどのくらい?見積もりの確認・交渉ポイントも紹介


目的やターゲットを明確にする

OEMを依頼する前に、販売目的やターゲット層、市場ニーズを明確にし、商品のコンセプトに反映させましょう。

目的やターゲットが曖昧なまま商品を製造すると、独自性に欠け、競争力の低い商品になる可能性があります。特に、OEMでは既存の製造ラインを使用するケースが多いため、同じOEMメーカーを利用している競合他社と商品の外観や機能が似通うリスクがあります。

そこで、目的やターゲットを明確しておけば、コンセプトにマッチしたブランディングやパッケージ、最適な販売チャネルの選定が可能です。また、競合商品の特徴や価格、パッケージデザインを分析すれば、製品の差別化により自社ブランドの価値や売上の向上につながる可能性もあります。


複数のOEM先を比較する

OEMの導入を検討する際、複数のOEMメーカーを比較検討することも大切です。メーカーによって得意分野や製品品質、生産能力、納期の柔軟性、価格などは異なります。違いを具体的に比較し、自社にとって最適なパートナーを選定しましょう。

比較する際はコストの安さだけでなく、品質やサポート内容、過去の実績、口コミ・評判も判断材料にし、総合的に評価して選びましょう。

OEM先を見つけるには以下のような方法も有効です。

業界紙やインターネットで最新情報を得る

食品・飲料関連では、例えば『飲料ビジネス』『ビバレッジジャパン』『日本食糧新聞』『食品新製品トレンド』など、様々な業界紙をチェックしてみましょう。近年はメーカーが独自にインターネットで情報発信している場合もあり、メーカーで検索すると思わぬ情報を得られることがあります。

展示会などに参加して直接メーカーに相談する

食品や飲料関連の展示会などに参加するのもおすすめです。個別にアポイントを取る必要がなく、多くの会社の最新情報に触れられる点がメリットです。セミナーも行われており、興味を持ったOEMメーカーがあれば直接質問もできます。

展示会以外でも、気になるメーカーがあれば面談や製造工程の視察を行うことをおすすめします。発注数に応じてコストや納期を柔軟に調整してくれるかを相談してみると良いでしょう。継続的に依頼する場合は、信頼性や相性を含めて確認する他、良好な信頼関係を構築することも重要です。


契約条件を明確にする

OEMメーカーと契約する際は、契約条件を明確にしておくことが大切です。OEMでは本来自社で行う「製造」の範囲を外部に委託するため、契約条件や責任の範囲を曖昧なまま進めてしまうとトラブルに発展する可能性があります。契約時に確認するべき事項の一例は以下のとおりです。

  • 製造範囲
  • 納期スケジュール
  • 注文可能な最低ロット数
  • 価格変動に関する条項
  • 知的財産権の帰属
  • 品質保証の内容
  • アフターサポート(返品・交換の対応条件や納期遅延時の補償など)

事前に取り決めておく事項を明確にし、書面で合意しておくとトラブル防止につながります。特に知的財産権は、製品のデザインや技術の権利をどちらが所有するかに関わるため、明確に定めることが重要です。

また、納期遅延や品質不良などのリスクに備え、対応方法を契約書に盛り込むことで、万が一トラブルが発生した際でもスムーズな対処が可能になります。役割や責任の範囲が明確になれば、お互い安心して取引ができるため、信頼関係の構築もしやすくなるでしょう。


品質管理体制を確認する

OEMで製造した商品の質が悪く、問題が発生した場合は、自社のブランドイメージや企業価値の低下に繋がるため、OEMメーカーの品質管理体制を確認しておくことが重要です。

例えば、食品関連のOEMメーカーの場合、食品安全のための国際規格である「FSSC22000」の認証を受けているか、訪問して適切な品質管理が行われているかなどをチェックします。

自社でも製造工程や素材の選定、検査方法、出荷基準を定めた品質基準を作成し、OEMメーカーの合意を受けておきましょう。また、最初から理想的な商品が製造できるとは限りません。必要に応じて製品の改良や改善に応じてくれるかどうかも確認しておくことが大切です。


サンプルの作成・小ロット開発からはじめる

いきなり量産すると在庫リスクが増すため、まずはサンプル作成や小ロット開発からはじめることが重要です。テスト品を製造すれば品質や仕様を確認でき、必要に応じてOEMメーカーへの細かい要望や商品の改善が行えます。

少量を生産してテスト販売してみるのもおすすめです。顧客や関係者からフィードバックを集めて改良を重ねれば、市場のニーズ把握や高品質な商品の製造につながり、成功の確率が高まります。



OEMの市場規模と今後の展望

OEMの導入業界は多岐にわたるため、業界全体の市場規模を示す公的データはありません。

しかし、OEMを活用している各業界の市場規模は拡大傾向にあります。なかでも健康食品市場は外国人観光客からの需要が増えている分野です。また、OEM商品の多いコンビニも外国人観光客には人気があります。

2024年の外国人観光客は過去最高の水準で増えていることもあり、コンビニ商品や健康食品をはじめとするOEMで製造されている商品の需要は今後も高まることが予想されます。

幅広いジャンルの商品を製造できるOEMを活用すれば、外国人観光客だけではなく、日本国内外の多様化するニーズに対応可能です。



飲料業界でOEMへの委託を検討しているなら「ドリンク ジャパン」へ

飲料業界でOEMに関する情報収集やOEM委託先のリサーチをするなら、ぜひ「ドリンク ジャパン」にご来場ください。ドリンク ジャパンとは、飲料・液状食品に関する開発・製造に特化した展示会です。

飲料・酒類・液状食品の商品開発、製造、検査に関する最新技術が出展し、関連メーカーが製品導入・比較検討のために世界中から来場します。製品は実物を見て比較検討でき、セミナーでは他社事例や最新の業界トレンドなどの動向も知ることが可能です。

OEM・ODM関連企業の出展がある他、飲料・酒類・液状食品向け原料・素材も出展するため、新商品のアイデア出しにも役立ちます。

展示会へは、事前登録をすれば無料で入場可能です。出展側として参加することも可能なため、自社製品の認知度向上や他社とつながる機会にご活用いただけます。自社の認知度向上や具体的な商談・リード案件獲得につながる可能性があるので、ぜひご来場ください。

■ドリンクジャパン 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ



OEMを成功させるためには情報収集と事前準備が重要

OEMとは、委託者のブランドで製品を生産することをさし、様々な業界で活用されています。コンビニやスーパーが販売するスイーツ、お菓子、ドリンクなど、身近にある食品・飲料の製造にOEMが導入されているケースも少なくありません。

飲料業界でOEMに興味があるなら、ぜひ「ドリンク ジャパン」にご来場ください。飲料・液状食品に関する開発・製造に特化した展示会で、来場側はOEMに関する情報収集やOEM委託先のリサーチが可能です。

出展側は自社製品の認知度向上や具体的な商談・リード案件獲得の場としてご活用いただけます。来場側、出展側双方にメリットがある展示会のため、ぜひこの機会にご来場ください。

■ドリンクジャパン 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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