プラントベースフードとは?ベジタリアン・ヴィーガンの違いや世界市場規模を解説
プラントベースフードは、市場が急速に拡大していると注目を集めている分野のひとつです。定義が曖昧なため、プラントベースフードが何を意味するのかはっきりしない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、プラントベースフードの概要や注目される背景、市場の展望や企業が参入する具体的なメリットを紹介します。また、プラントベースフードの需要と関連が深い「ヴィーガン」と「ベジタリアン」に関して、両者の違いも紹介します。
プラントベースフード市場への参入を検討している方や興味のある方はぜひ参考にしてください。
プラントベースフードとは
プラントベースフードとは、主に植物由来の食材で作られた食品をさします。
多くの食品は動物性原材料を使用せず、野菜、果物、豆類、穀物、ナッツ、種子などを主成分としています。特に、大豆や小麦、エンドウ豆、オーツ麦などを原料に、肉、魚、卵、バターを代替する加工食品(代替肉や代替乳飲料など)が製造されています。
ただし、プラントベースフードには明確な定義がありません。そのため、原材料が全て植物由来の食品から、一部に動物性原材料や食品添加物を含む食品まで、多様な商品が存在します。
プラントベースフードは、環境負荷の軽減や健康志向、動物福祉への配慮など、さまざまな理由から注目されており、食の多様化に対応する選択肢として広がりを見せています。
プラントベースフードが注目されている背景
プラントベースフードが注目される背景には様々な要因があります。例を挙げると以下のとおりです。
- 健康志向の高まり
- サスティナブルへの関心
- 宗教上の理由
- 動物愛護意識の高まり
背景の1つとして、健康志向やダイエットなど、身体に気をつかう流れがありますが、それだけではありません。
プラントベースフードは、畜産品に比べて生産過程で排出される温室効果ガスが少なく、使用する水の量も少ない傾向にあるため、環境に優しいとされています。また、世界の人口増加により食料不足への懸念が高まるなか、プラントベースフードは肉や魚の代替となる貴重なタンパク源として期待されている食品のひとつです。
さらに、プラントベースフードは動物性食品を避けるヴィーガンやベジタリアンからも注目を集めています。主要100ヶ国・地域のヴィーガンおよびベジタリアンは、2018年時点で約6.5億人です。毎年約1%近く増加傾向しており、今後もプラントベースフードの需要が高まることが予想できます。
加えて、宗教上の理由で肉食を避ける人もいる他、近年では人や社会・環境に配慮した消費行動である「エシカル消費(倫理的消費)」の普及・啓発が進められています。
上記の理由から、プラントベースフードの需要は世界的に増加傾向です。具体的な市場規模は後述するので、そちらも参考にしてください。
ヴィーガンとベジタリアンの違い
プラントベースフードに関連する用語に、「ヴィーガン」と「ベジタリアン」があります。混同されやすい言葉ですが、厳密には考え方やライフスタイルに違いがあるため、理解しておきましょう。
ヴィーガンとは、動物性由来のものを排除する食生活やライフスタイルをさします。単なる食事制限にとどまらず、動物の権利や環境保護を重視する思想を持ち、ウールや革製品など動物製品を身につけない場合も多い点が特徴です。
一方、ベジタリアンの定義は流動的であり、動物性食品の摂取に関してはいくつかの派があります。ヴィーガンと大きく異なるのは、動物性食品を完全に排除する訳ではない点です。それぞれの概要を紹介すると、以下のとおりです。
※出典:日本ベジタリアン協会「ベジタリアンとは」
上記の他にも様々な種類のベジタリアンが存在します。なお、国際ベジタリアン連合(IVU)では、ペスコ・ベジタリアンやポーヨー・ベジタリアンはベジタリアンとして認めていないなど、ベジタリアンのなかでも考え方が異なります。
プラントベースフードの市場規模
TPCマーケティングリサーチの調査によると、日本のプラントベースフード市場(豆乳を含む)は、2022年で前年比6.6%増の1,234億円です※1。過去10年間でみると約2.2倍に増加しています。
一方、コンサルティング会社のSPINSによると、アメリカではプラントベース食品の小売売上高が2021年に6.2%増加し、市場規模は約74億ドルに達したとされています※2。植物性ミルクの分野はプラントベース食品のなかでも特にシェアを伸ばしており、2021年の総売上高は25億ドルで、過去1年間で20%増加しています。
また、米ビジネスリサーチカンパニーによると、植物由来食品全体では、2023年に503.2億ドル、2024年には569.9億ドルに成長しており、2028年には年平均成長率13.9%で959億2000万ドルに成長する見込みとされています※3。
世界の植物由来食品市場のなかでもアジア太平洋地域は特に市場規模の拡大が見込まれているため、日本のプラントベースフード市場は今後も成長すると予想されます。
プラントベースフードの商品例
プラントベースフードには様々な種類があります。代表的な食品の例は以下のとおりです。
- 大豆ミート(プラントベースミート)
- 豆乳、アーモンドミルク(プラントベースミルク)
- プラントベースエッグ
- 植物性チーズ
- 伝統プラントベースフード テンペ
大豆ミート(プラントベースミート)
大豆ミートは「プラントベースミート」と呼ばれる食品の種類のひとつです。大豆(大豆油を取り除いた後の大豆)を原料とし、タンパク質を中心に加工されています。主な特徴は以下のとおりです。
- 肉に比べて低カロリー
- 低脂質かつ高タンパク質
- 食物繊維、ミネラルなども豊富
- 肉に比べて生産過程の環境負荷が少ない
世界人口の増加にともなう食料不足が危惧されるなか、大豆ミートは効率的にタンパク質を摂取できる食品として注目を集めています。
豆乳、アーモンドミルク(プラントベースミルク)
豆乳やアーモンドミルクはプラントベースフードのひとつです。「プラントベースミルク」と呼ばれ、ライスミルクやオーツミルクなどを含めて様々な種類があり、市場参入している企業も少なくありません。プラントベースミルクには以下のとおり、多くのメリットがあります。
- 低カロリー、低脂質、低糖質、コレステロールゼロ
- 食物繊維やビタミンEが豊富(種類によって異なる)
- 乳アレルギーや乳糖不耐症の人でも飲める
- 動物性製品に比べて生産過程での環境負荷が少ない
種類が多いため、自分の好みや気分にあわせて選べる点もプラントベースミルクのメリットです。
プラントベースエッグ
鶏ではなく植物性由来の原料で作られた卵は「プラントベースエッグ」と呼ばれます。市場規模はプラントベースミルクの1%とされており、現時点では商品数は多くありません。日本では大手食品製造会社がプラントベースエッグを開発・販売しています。
コレステロールゼロ、低カロリー、低脂質などの特徴があり、今後の商品展開が期待されるプラントベースフードです。
植物性チーズ
乳製品を使わない植物性チーズもあります。特にピザやパスタなどで使われることが多い食品です。主な原材料はカシューナッツ、ココナッツオイル、レモン汁、塩、酢で、簡単に作ることができます。
伝統プラントベースフード テンペ
テンペは、大豆を発酵させて作る伝統的なインドネシアの食品です。大豆を蒸して、発酵させることで固まったブロック状をしています。発酵過程で大豆の栄養が変化し、消化が良くなるとともに、独特の香りとしっかりとした食感が特徴です。
高タンパク質食品として注目されており、ベジタリアンやヴィーガンの食事に取り入れられることが多いテンペは、現在日本国内でも製造しています。
企業がプラントベースフード市場に参入するメリット
企業がプラントベースフード市場に参入するメリットは以下のとおりです。
- 新規顧客層の拡大が期待できる
- ブランドイメージの向上につながる
- グローバル市場への展開が期待できる
紹介したとおり、プラントベースフード市場は健康志向や環境問題への関心の高まりを背景に拡大しています。将来的な需要増加が期待される分野です。
ヴィーガンやベジタリアンだけでなく、健康志向や社会的課題の解決を考慮した消費行動である「エシカル消費」を意識する層など、幅広い層にアプローチできます。プラントベースフード市場への参入により、新規顧客層の獲得が期待できるでしょう。
また、プラントベースフードの提供は、「環境・健康を重視する企業」とのイメージ強化につながり、ブランドイメージの向上に貢献するでしょう。
プラントベースフードは日本に限らず世界的なトレンドです。近年ではインバウンド需要に伴い、宗教的な理由で動物性食品を食べられない外国人観光客やヴィーガン、ベジタリアン向けにプラントベースフードを提供する宿泊施設もあります。国内だけでなく、将来的にはグローバル市場への展開も見込める点もプラントベースフード市場に参入するメリットです。
飲料業界でプラントベースフード市場に参入するなら「ドリンクジャパン」へ
プラントベースフード市場への参入は、企業の新規顧客開拓やグローバル市場参入など、企業の可能性を高めます。また、サスティナブルの観点から社会的価値も高める機会になります。
プラントベースフード製品の種類が多く、身近な分野のひとつが、豆乳やアーモンドミルクをはじめとするプラントベースミルクです。
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セミナーでは、他社事例や最新の業界トレンドなどの動向も学ぶことが可能です。過去には、植物性ヨーグルト飲料やオーツミルクなど、プラントベースフードの試飲・配布が行われた実績もあります。
展示会へは、事前登録をすれば無料で入場可能です。出展側として参加することも可能なため、自社製品の紹介や他社とつながる機会にご活用いただけます。
自社の認知度向上や具体的な商談の実現・リード案件獲得につながる可能性があるので、ぜひ出展もご検討ください。
■ドリンクジャパン 2025
会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
会場:幕張メッセ
プラントベースフードは今後大きな拡大が予想されている市場
プラントベースフードとは、主に植物由来の食材で作られた食品をさします。食に対するニーズの多様化が進み、社会問題への関心が高まるとともに市場が急速に拡大している分野です。
身近な例には、大豆ミートの他、豆乳、アーモンドミルクなどの飲料が挙げられます。低カロリーかつ高タンパク質のため健康やダイエットなどに興味がある人々に注目を浴びています。
プラントベースフード市場への参入を検討しているなら、ぜひ「ドリンクジャパン」にご来場ください。飲料・酒類・液状食品の関連メーカーが世界中から来場・出展する展示会です。
「ドリンクジャパン」に来場いただくと、プラントベースフード市場への参入に役立つ情報収集・製品比較などが可能です。出展側として参加いただくと、自社製品アピールの場や商談獲得の機会としてご活用いただけるので、ぜひご検討ください。
■ドリンクジャパン 2025
会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
会場:幕張メッセ
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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