食品OEMの費用相場はどのくらい?見積もりの確認・交渉ポイントも紹介
食品のOEMを検討する場合は、自社にあった適切な企業に依頼するためにも、事前に相場を把握しておくことが大切です。
契約条件によって大きく見積もりが異なるため、費用に影響する要素も把握しておきましょう。できるだけ仕様を明確にして同条件で比較すると、依頼先を検討しやすくなります。
本記事では、食品や飲料のOEM費用相場を紹介します。見積もり時に確認すべきポイントや価格を下げるコツも解説するため、OEMを検討している方はぜひ参考にしてください。
食品OEMのメリットとは?
OEMとは、「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の略語です。OEMは委託元の他社から仕事を受託して、他社ブランドの製品を製造することを指します。
食品業界でOEMは以前から利用されており、例えばコンビニエンスストアがPB(プライベートブランド)の商品を製造する際に利用する場合もあります。委託する側、受託する側の双方にメリットがあるため、以下で紹介します。
OEMを委託するメリット
販売事業者などの受託側は、OEMを活用すると多くのメリットがあります。
まず、製造に必要な加工設備を自社で保有する必要がなくなり、生産に関わる専門的な知識や実績がなくても、希望する加工食品の販売が可能です。
また、OEMを通じて工場や設備、生産ノウハウを外部に委託できるため、自社で生産体制を構築する手間が省けます。他社に製品やその一部を委託することで、必要な数量の供給を受けられるため、自社は販売や商品開発に専念できる点がメリットです。
このように、OEMを活用すれば、コストを削減して効率的なビジネス展開が可能です。
OEMを受託するメリット
食品加工事業者などの受託側も、OEMを活用することで多くのメリットがあります。
まず、自社で新商品を企画し、営業する手間が不要になります。特に、小規模の加工工場が苦手とされる自社製品を立案し発売する際のマーケティング業務の負担も軽減されます。
また、最大のメリットは、OEMを受託する際の取引条件は全量買取である点です。これにより、製造したロット分はすべて現金化が約束され、不良在庫のリスクを大幅に軽減できます。一部では計画生産を行う場合もありますが、基本的には過剰在庫リスクを抑えられるのが特徴です。
OEMについて詳しくは以下の記事でも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
食品OEMの費用相場
食品をOEM生産する時の費用は、商品の種類や仕様によって大きく変動します。ここでは以下の3つのケースに分けて、相場を紹介します。
- 一般食品
- 健康食品
- 機能性表示食品
ただし、この費用は製品仕様や製造条件によって大きく変動するため、具体的な見積もりはOEMメーカーに直接問合せましょう。あくまでもOEMに見積もりを取る時や、費用を確認する時の参考にしてください。
一般的な食品のOEM費用相場
一般的な食品や飲料の費用相場の例は以下のとおりです。
- 飲料:1本200円〜
- ごはん類:1個100円〜
- カレー類:1パック100円〜500円
- スナック類:1キロ数万円
- クッキー:1枚40円〜
費用相場は、使用する原材料、製造ロット、納品ロット、包装形態、保管温度帯などにより変動します。
試作サンプル製造時、工場によって、無償で行う工場もあれば、有償で行う工場もあります。最近はコストの高騰などもあり、サンプル試作は有償で行う工場が多くみられます。
健康食品のOEM費用相場
健康食品の場合、処方だけでなく剤形によって大きく費用は変わります。剤形別の費用の目安は以下のとおりです。
- ハードカプセル:5万個(粒)30〜150万円
- ソフトカプセル:5万個(粒)30〜250万円
- 打錠:10万個(粒)40〜100万円
- ドリンク:1000本50万円〜
相場を見てわかるとおり、剤形による費用の差が大きいため、仕様を固めてから見積もりを取ることが大切です。
特に、健康食品は1回の製造金額が大きく、また不良在庫の二次加工もできないので、企画発案やプランニングをする際、OEM委託候補先へ概算見積もりを依頼して、よく検討してから進めましょう。
機能性表示食品のOEM費用相場
機能性表示食品のOEM費用の相場は、サプリメント10万粒で50〜100万円と、健康食品とほぼ同額になります。
機能性表示食品を販売する場合は、消費者庁に届け出を行う必要がありますが、届け出自体の費用はかかりません。ただし、書類作成や臨床試験などを委託する場合は、以下の費用が必要です。
- 届出書類作成支援:30〜200万円程度
- SR(システマティックレビュー):100〜400万円程度
- 臨床試験:1000〜5000万円程度
SRとは、機能性に関与する成分の研究報告を調査した上で、科学的な手法を用いてまとめることです。機能性表示食品のOEMを活用する場合は、自社で試験を行うか、全て委託するかを最初に検討しておきましょう。
食品OEM相場を左右する主な要因
食品OEMにかかる費用は、条件により大きく変動します。ここでは、費用に影響する主な要因を紹介します。
- 原材料のコストと調達難易度
- 生産設備と技術力
- 最低ロット数と生産規模
- 品質管理体制
- 包装・梱包の仕様
- 輸送・配送の条件
原材料のコストと調達難易度
希少な原材料や海外からの輸入品を用いる場合、高額になりやすい傾向があります。その他、季節変動の多い農産物を用いるケースも、価格変動のリスクがあるので注意が必要です。
健康食品や機能性表示食品では、食品をそのまま用いるのではなく加工することが多く、この加工度合いによっても費用は変わります。
生産設備と技術力
特殊な製造設備が必要な場合、コストが上昇します。そもそも製造できるOEM先が限られる可能性もあるため、注意が必要です。
技術力のあるOEM先であれば、設備を保有している可能性が高く、コストダウンに寄与するでしょう。製品の仕様を正確に伝えた上で、製造方法まで加味した見積もりをもらうことが大切です。
最低ロット数と生産規模
一方、小ロット生産なら必要な原材料が少ない分、総額は下がりますが、割高になる傾向です。ただし、食品には賞味期限があるため、売り切れる数量を加味した上で適切なロット数を検討する必要があります。
品質管理体制
品質管理をどの程度行うかによっても、費用は変動します。厳格な品質管理を行うほど、コストは上がる傾向にあるため、どの程度チェックを必要とするか、どこまでを良品とするかをあらかじめ検討しなければいけません。
食品衛生法をはじめとする業界の法規制も確認した上で、管理方法をヒアリングしておくことが重要です。
包装・梱包の仕様
包装や梱包の仕様もコストに影響します。例えばプラスティック包装とガラス容器ならば、一般的にビンの方が割高です。
高級感のある包装や特殊な容器を用いたり、印刷の色数が増えたりすることもコスト増の要因となります。また、環境配慮型のパッケージを使う場合も費用に影響します。
また、食品工場のなかには、パッケージデザイン製作対応をしていない工場も多く存在します。パッケージデザイン製作までワンストップでできる工場なのか否かを事前に確認しましょう。
食品OEMの費用見積もり時の確認ポイント
ここまで説明したとおり、食品OEMの費用は仕様や条件によって大きく変動します。そこで、費用を見積もる時に確認すべきポイントをまとめました。
- ロット数を明示する
- 納品ロット条件を確認する
- 試作費を加味する
- 入れたい成分を伝える
- 容器包装の条件をそろえる
- 品質管理基準を確認する
- 実績やサポート体制を確認する
- 原料調達力を確認する
条件をそろえずに比較すると、いざ仕様を決めた時に割高になる可能性があります。また、価格以外の問題が出る可能性もあるため、注意しましょう。
ロット数を明示する
製造ロットによって費用が変わるため、あらかじめ希望するロットを明示しておきましょう。検討中の場合は、ロット数を何段階か分けて見積もりを取ることをおすすめします。
なお、最低ロットは企業によって変わります。ロット数によっては委託できない可能性もあるため、条件に合うかどうか確認することも大切です。
納品ロット条件を確認する
納品は全量一括納品か、分納対応可能か、ロット条件を確認しておきましょう。
また、輸送時の温度帯(常温/クールなど)や、納品時の受け側の道路の状況(大型車両が問題なく止められるか)なども確認が必要です。
試作費を加味する
試作の回数も仮決めして見積もりを取りましょう。
企業により、試作費を別途請求する、無償提供するなど方針が異なります。また、一定回数以上の試作では追加費用がかかるケースもあります。
試作に費用がかかるのか、また何回の試作を前提としているのかを確認した上で、コスト比較することが大切です。
入れたい成分を伝える
使いたい食品や入れたい成分によって費用は変わります。希少性が高かったり、高度な加工が必要だったりする場合、コストが上がるので要注意です。
商品コンセプトに関わる成分は、あらかじめ提示しておきましょう。
容器包装の条件を決める
容器包装により、費用が変わります。また、バルク製造のみ対応しており、パッケージングは含まれていないこともあります。
あらかじめパッケージングまで意識して、容器包装の条件をそろえておくと同条件で比較できるでしょう。
品質管理基準を確認する
依頼前に、品質管理体制も確認しておきましょう。品質管理のプロセスや評価方法を確認すると、安心して製造まで依頼できます。
いざ製造を依頼してから管理が不十分だったというトラブルの防止につながります。
実績やサポート体制を確認する
委託先がこれまで手がけた商品の実績を確認すると、信頼感が増します。急な製造依頼に対応してもらえるか、トラブル時の対処方法など、サポート体制も確認しておくと安心です。
過去の実績は、委託先の得意ジャンルを見極めるのにも有効な手段です。
原料調達力を確認する
取り扱いたい食品の専門性も大切な要素です。専門性が高い企業ほど、良質な原材料を選定し、安定して調達できます。
同じ原材料の調達実績を確認し、安定供給が可能か確かめておきましょう。
食品OEM費用交渉のポイント
食品OEMに見積もりを依頼したら、想定より高かったというケースもあります。費用を下げたい場合は、以下のポイントを意識して交渉してみましょう。
- 複数のOEM先を比較する
- 小ロット開発からはじめる
- 委託者と受託者が信頼関係を築く
複数のOEM先を比較する
複数のOEM先を比較すると、費用や品質、納期を比較できます。直接話を聞いた上で、条件を並べてみましょう。
また、複数の見積もりを取り競争させると、条件を交渉できる可能性があります。
小ロット開発からはじめる
ロットを大きくした方が、ひとつあたりの費用は下がります。一方で在庫リスクが増すため、売れ行きが不透明な新商品の場合、小ロット開発からはじめるのがおすすめです。
小ロットで開発すると必要な原材料が少ないため、全体の費用は下がります。小ロット開発に対応していないところや、ロットを大きくできないところもあるため、将来性も加味して比較しておきましょう。
委託者と受託者が信頼関係を築く
OEMを成功させるために最も重要なことは、委託者と受託者の間で、継続的な信頼関係を築くことです。これが成功の鍵となります。
無理に価格を下げる交渉をしたり、外注先を下請けのように扱って誠意のない対応を続けたりすると、良い結果を得ることは難しくなります。双方が誠実で協力的な姿勢を保つことが、長期的なパートナーシップと成功につながります。
食品のOEMを検討するなら「ドリンクジャパン」で情報収集を
OEM先を選定する場合は、事前に費用や依頼できる業務内容を比較するのがおすすめです。委託先候補と話すと費用を比較できるだけでなく、検討すべき条件や商品の詳細が明確になります。
食品のなかでも飲料や液状食品のOEMを検討しているならば、「ドリンクジャパン」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
ドリンクジャパンでは、400社の企業が新製品やソリューションを出展しています。OEMはもちろん、今注目の原料や素材の出展も多数あるため、新商品のアイデア出しにも役立つでしょう。
なお、来場だけでなく出展者側として参加することにもメリットがあります。OEMに興味のある企業が集まるなかで自社のサービスや製品を大いにアピールできる他、導入を前向きに考えている企業と商談でき、案件の獲得につながります。
来場、出展ともにメリットがあるので、ぜひ参加をご検討ください。
■ドリンクジャパン(2025年12月3日-5日、幕張メッセ)
食品OEMの相場を知って開発・製造にのぞもう
食品OEMの相場は、作りたい食品や容器包装によって異なります。そのため、比較をする時は条件を明確にしてそろえ、見積もりをもらうことが大切です。費用以外にも、品質面や実績も確認し、安心して委託できるOEMを探しましょう。
食品のなかでも飲料や液状食品のOEMを検討している方は、「ドリンクジャパン」への参加がおすすめです。複数のOEMを比較でき、話題の食品に関する情報もまとめて集められるので、ぜひ足を運んでみてください。
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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