ビールの種類・特徴を解説!ラガーやエールの味わいの違いも紹介

ビールの種類は、使う酵母や造り方の違いで大きく「ラガー」と「エール」に分けられます。

ラガー系・エール系ともにさらに細かいビアスタイル(種類)が存在し、それぞれ見た目や味わいが異なるため、違いを理解しておくことで、ビールをより楽しめるでしょう。

また、種類によって好む消費者層や飲みたいシーンも異なるため、オリジナルビールの開発・製造・販売を考える場合は、より理解を深める必要があります。

本記事では、ビールの様々な種類を解説します。ビールが好きな方はもちろん、オリジナルビールの製造・販売を考える企業の方は参考にしてください。



ビールは大きく分けて「ラガー」と「エール」の2種類

先述のとおり、ビールには大きく分けてラガーとエールの2種類があります。それぞれの違いは下表のとおりです。

ラガー酵母やエール酵母を添加せず、自然のなかにある野生酵母を取り込むビールも存在します。野生酵母を使ったビールは「自然発酵ビール」と呼ばれ、エールビールのなかに含むケースが一般的です。

以下で、ラガービールとエールビールの特徴を詳しくみていきましょう。


ラガービール

ラガービールはラガー酵母を使って発酵させ、貯蔵工程で低温熟成させるビールです。ビールの表示に関する公正競争規約では、貯蔵工程で熟成しないとラガービールを名乗れないと定められています。

また、ラガービールは発酵が進むと酵母がタンクの底へと沈む性質から、「下面発酵ビール」とも呼びます。約0~15℃の低温で10日間ほど発酵させ、1ヶ月程度熟成期間が必要です。

現在、日本の大手メーカーが造るビールの多くはラガービールに該当し、すっきりした味が特徴です。


エールビール

エールビールはエール酵母を使って発酵させるビールです。約15~20℃と、ラガービールよりも高い温度帯で発酵します。発酵期間はラガービールより短い3日ほどで、熟成期間も2週間程度です。

また、エールビールは発酵が進むと酵母がタンク上部へと浮き上がる性質から、「上面発酵ビール」とも呼ばれます。

香り豊かで味わい深いビールを造れる点が特徴です。


その他のビール

ラガービールとエールビールは特定の酵母を添加して発酵させますが、野生の酵母を取り込んで発酵させる自然発酵ビールも存在します。自然発酵ビールは環境により取り込まれる酵母が異なるため、地域性を出せる点が特徴です。

また、原材料の一部に果物を使う「フルーツビール」は、上面発酵・下面発酵ともにあります。フルーツビールは果物の風味が感じられるため、ビールの苦味が苦手な方でも飲みやすい味わいを作れます。



ビールの種類(ビアスタイル)一覧

ラガービールやエールビールには、ビアスタイルと呼ばれるさらに細かい種類が存在します。代表的なビアスタイルを下表にまとめました。

それぞれ見た目や味わい、誕生した地域・経緯が異なります。それぞれの代表的な種類をみていきましょう。


ラガービールの代表的な種類

日本で多く造られているビールはラガービールですが、ラガービールのなかにも細かな種類が存在します。各ビアスタイルの特徴を以下で解説します。

  • ピルスナー
  • シュヴァルツ
  • ボック
  • ラオホ
  • ドルトムンダー
  • デュンケル
  • ヘレス

ピルスナー

ピルスナーは、1843年にチェコのピルゼン地方で誕生しました。淡い色で、ホップの苦味と爽快な味が特徴です。

世界的に普及しているビールの種類であり、日本で造られるラガービールの大半はピルスナーに属します。

ピルスナーに該当する商品例には、ピルスナーウルケル(アサヒ)やMINOH BEER ピルスナー(箕面ビール)、ザ・デイ TGピルスナー(ベアレンビール)などがあります。


シュヴァルツ

シュヴァルツは、ドイツのバイエルン地方で古くから造られているビールです。

ドイツ語で黒を意味する言葉が名前の由来になっており、黒い見た目をしています。見た目に反して苦味は弱く、香ばしい味わいが特徴です。

シュヴァルツに該当する商品例には、ベアレン シュバルツ(ベアレンビール)や御殿場高原ビール シュバルツ(御殿場高原ビール)などがあります。


ボック

ボックはドイツのアインベック地方発祥のビールで、バイエルン地方で発展しました。

元々は濃い色のビールでしたが現在は淡い色のビールが多く、芳醇でコクのある味が特徴です。アルコール度数も6.0~7.5%と、一般的なビールよりも高めです。

ボックに該当する商品例には、プレミアム ロック・ボック(八ヶ岳地ビール)や上馬ビール ボック(細川酒造)などがあります。


ラオホ

ラオホは、ドイツのバンベルクの伝統的なビールです。

麦芽を燻製して造るためスモーキーなフレーバーが特徴的で、燻製料理と相性の良い味わいです。

ラオホに該当する商品例には、富士桜高原麦酒 ラオホ(富士桜高原麦酒)や猪苗代地ビール ラオホ(猪苗代地ビール醸造所)などがあります。


ドルトムンダー

ドルトムンダーはドイツのドルトムント地方で発展し、ピルスナーを参考にして造られました。見た目は淡い色をしており、「ブロンドビール」とも呼ばれます。

ドルトムンダーに該当する商品例には、ベアレン クラシック(ベアレンビール)などがあります。


デュンケル

デュンケルは麦芽をローストして使ったドイツ発祥のビールで、見た目は褐色です。

同じドイツ発祥のビール・シュヴァルツとも似ていますが、デュンケルは麦芽を低温で弱くローストする点が異なります。デュンケルはシュヴァルツと比べ、苦味や色味が薄いのが特徴です。

デュンケルに該当する商品例には、独歩 デュンケル(宮下酒造)や八ヶ岳ビール タッチダウン デュンケル(八ヶ岳ビール)などがあります。


ヘレス

ヘレスはドイツのミュンヘンで発祥し、ピルスナーと対抗するために造られました。

見た目は明るい金色で、麦芽の旨み・甘みがあり、ホップの苦味は弱い点が特徴です。

ヘレスに該当する商品例には、秋田美人のビール(秋田あくらビール)や修善寺ヘリテッジヘレス(ベアードブルーイング)などがあります。


エールビールの代表的な種類

つづいて、エールビールの代表的なビアスタイルを紹介します。エール酵母を使った上面発酵ビールである点は共通していますが、発祥地や見た目・味わいはそれぞれ異なります。

  • ペールエール
  • IPA
  • ゴールデンエール
  • ポーター
  • スタウト
  • ヴァイツェン
  • ベルジャンホワイト
  • セゾン
  • アルト
  • ケルシュ
  • バーレーワイン

ペールエール

ペールエールは、18世紀にイギリスのバートン・アポン・トレントで誕生したビールです。フルーティでキリッとした苦味が特徴で、造られた当時は濃い色のビールが主流だったため「淡い(ペール)エール」と名付けられました。

のちにペールエールを輸出しやすくするため、保存性を高めたIPAが生まれます。

ペールエールに該当する商品例には、多摩の恵 ペールエール(石川酒造)やイセカドヤビール ペールエール(伊勢角屋麦酒)、ミツボシビール ペールエール(盛田金しゃちビール)などがあります。


IPA(インディア・ペールエール)

IPA(インディア・ペールエール)は、ペールエールを改良して生まれたビールです。イギリスからインドまで運ぶためにホップを大量に使って殺菌力を高め、アルコール度数も上げて保存性を強化しています。

ホップの苦味や香りが強く、アルコール感がある点も特徴です。

IPAに該当する商品例には、インドの青鬼(ヤッホーブルーイング)や志賀高原IPA(玉村本店)などがあります。


ゴールデンエール

ゴールデンエールは、イギリスのビール文化のなかで1960年代~1970年代に発展したビールです。

透き通った金色をしており、豊かな香りやラガービールに似た軽快な飲み口が特徴です。

ゴールデンエールに該当する商品例には、黄蘗富士(Mt.Fuji Brewing)やオラホビール ゴールデンエール(オラホビール)などがあります。


ポーター

ポーターは、1722年にロンドンで造られ、発展したビールです。

濃厚でホップの苦味が強く感じられ、濃い色をしています。苦味は強いものの、ココアに近い風味やほのかな甘みを感じられる特徴もあります。

ポーターに該当する商品例には、黒船ポーター(ベアードブルーイング)や星空のポーター(ヘリオス酒造)などがあります。


スタウト

スタウトは1847年にイギリス(アイルランド)で誕生し、ポーターから派生したスタイルのビールです。

大麦を焙煎して造るために独特な苦味と香りがあり、ポーターよりもアルコールを高めている点が特徴です。スタウトは色が濃く濃厚で苦味の強いビールですが、甘いスタウトも存在します。

スタウトに該当する商品例には、アサヒスタウト(アサヒビール)や箕面ビール スタウト(箕面ビール)などがあります。


ヴァイツェン

ヴァイツェンは、ドイツのバイエルン地方で誕生した伝統的な白ビールです。淡い色のヴァイツェンが多いですが、一部濃い色のヴァイツェンも存在します。

ホップの使用量が少ないために苦味が弱く、炭酸ガスの多さから清涼感ある味わいが特徴です。

ヴァイツェンに該当する商品例には、富士桜高原麦酒 ヴァイツェン(富士桜高原麦酒)や常陸野ネストビール ヴァイツェン(木内酒造)などがあります。


ベルジャンホワイト

ベルジャンホワイトは、14世紀頃のベルギーで発祥した伝統的な白ビールです。

小麦を使い、副原料にコリアンダーシードやオレンジピールを入れて造ります。ベルジャンホワイトは甘酸っぱい味のため、ビールの苦味が不得意な方でも飲みやすいビールです。

ベルジャンホワイトに該当する商品例には、水曜日のネコ(ヤッホーブルーイング)や日南麦酒 ベルジャン・ホワイト(日南麦酒)などがあります。


セゾン

セゾンはベルギー発祥のビールで、夏に飲まれていました。柑橘系の香りがあり、喉越し良くて爽やかな味が特徴です。

セゾンに該当する商品例には、僕ビール君ビール ジョーカーくん(ヤッホーブルーイング)や室町セゾン(西陣麦酒)などがあります。


アルト

アルトは、ドイツのデュッセルドルフで発展した褐色のビールです。

ホップの香りが効いた味が特徴で、コクがあるためドイツの肉料理と相性の良さから広まりました。

アルトに該当する商品例には、田沢湖ビール アルト(あきた芸術村)や金しゃちビール アルト(盛田金しゃちビール)などがあります。


ケルシュ(ケルシュスタイル)

ケルシュはドイツのケルン特産のビールです。淡い色でアルトに似た香味をしていますが、薄い色をしています。エールビールのフルーティさと、ラガービールのキレを併せ持った点が特徴です。

なお、「ケルシュ」はブランド名であり、「ケルシュ協定」に調印したケルン近郊の醸造所が造ったビールでなければ名乗れません。それ以外の地域や醸造所で造ったケルシュ系のビールは「ケルシュスタイル」と呼びます。

ケルシュスタイルに該当する商品例には、國乃長ビール 蔵ケルシュ(壽酒造)や道後ビール ケルシュ(水口酒造)などがあります。


バーレーワイン

バーレーワインは、アルコール度数の高いエールビールとしてイギリスで誕生しました。一般的なビールのアルコール度数は5%ほどですが、バーレーワインは8~12%もあり、ワインに近いアルコール度数です。

アルコール度数を高めるために麦芽とホップを多く使い、半年以上熟成した濃厚な味をしています。

バーレーワインに該当する商品例には、フレッドの寝酒ビール(えぞ麦酒)や眠れるししし(ヤッホーブルーイング)などがあります。


その他ビールの代表的な種類

ラガー系とエール系の代表的なビアスタイルを紹介しましたが、その他の種類として分類できるビールも存在します。

ラガー酵母やエール酵母を使わずに空気中の酵母を使って発酵させるビールや、醸造過程で果物を加えるフルーツビールが該当します。以下で詳しくみていきましょう。

  • ランビック
  • グーズ
  • ファロ
  • クリーク
  • フルーツビール

ランビック

ランビックはベルギーの伝統的なビールで、空気中の酵母を使って長期間発酵させて作ります。パヨッテンラント地域にある、ゼンネの谷に生息する野生酵母を使ったビールのみがランビックを名乗れるため、日本では造れません。

ランビックは独特な香りで酸味が強いため、他のビールをブレンドしたり甘味料を加えたりして味を調えています。

ランビックをブレンドして造るグーズやランビックに甘みを加えるファロ、ランビックにさくらんぼを加えて発酵させるクリークなども存在します。


自然発酵ビール

ランビックは醸造地域が限定されますが、日本でも天然酵母を使った自然発酵ビールを造る醸造所が存在します。

自然発酵ビールに該当する商品例には、いわて蔵ビール オーガニックビール(世嬉の一酒造)などがあります。


フルーツビール

フルーツビールは醸造過程で果物を加えて造るビールで、フルーティで飲みやすい味わいのためにビールの苦味が不得意な方にもおすすめです。

フルーツビールは上面発酵・下面発酵ともあり、使用する果物によって味わいが変わります。

フルーツビールに該当する商品例には、常陸野ネストビール ゆずラガー(木内酒造)などがあります。



日本でのビールの定義

日本では、ビールの定義が酒税法で決まっています。法律が定める条件を満たす商品でなければ日本ではビールを名乗って販売できません。ビールに類似した飲料は、発泡酒に分類されます。

オリジナルのビールを開発し、製造・販売する場合は法律上の定義にも注意しましょう。

日本でビールを名乗るための条件は、以下のとおりです。

  1. 麦芽、ホップ、水を原料に発酵させたもの
  2. 麦芽、ホップ、水と、麦、その他の政令で定める物品を原料に発酵させたもの
  3. 1または2にホップまたは政令で定める物品を加えて発酵させたもの

2と3は、麦芽の重量がホップ・水以外の原料の合計重量の50%以上かつ、法令で定める物品の合計重量が麦芽の重量の5%を超えてはいけません。

つまり、特定の副原料以外を加えたり、麦芽の使用割合が定義に満たなかったりする場合、日本ではビールを名乗れません。ビールに類似しているものの、ビールの条件を満たさない飲料は発泡酒として扱われます。



ビールの新商品開発・製造に関する情報収集は「ドリンクジャパン」へ

ビールには様々な種類が存在するため、オリジナルビールの開発・製造を考えている場合は、種類ごとの違いを理解した上で商品の設計を行うことが重要です。

必要な情報を得るには、ビール開発・製造のトレンドがわかる展示会へ足を運びましょう。

例えば、飲料や酒類に特化した展示会である「ドリンクジャパン」では、開発・製造に関連する企業が多数出展します。セミナーも実施しており、ビールに関する最新情報の収集に役立ちます。展示会は、来場登録すれば無料で入場できます。

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出展スペースには限りがあるため、早めの申し込みがおすすめです。

■ドリンクジャパン(2025年12月3日-5日、幕張メッセ)



ビールの種類や特徴を知って魅力ある商品を作ろう

ビールには大きく分けて「ラガー」と「エール」の2種類があり、さらに細かい種類に分類されます。種類によって味わいや合う料理などが異なるため、違いを知ることで、より楽しめるでしょう。

また、飲んで楽しむだけでなく、魅力あるビールを開発・製造するには、より詳しく特徴を知る必要があります。

ビールの開発・製造に関する情報収集をしたい場合は、飲料や液体食品に特化した展示会「ドリンクジャパン」への来場がおすすめです。それぞれの特徴を知って魅力的な商品を開発しましょう。

ドリンクジャパンの詳細は以下からご確認ください。



▶監修:ストロングおじさん

缶チューハイ研究家
年間1,000本の缶チューハイを飲む缶チューハイ研究家。得意のパワポを駆使し、新製品のレビューから企業の製品開発・プロモーション企画の支援まで手がける。缶チューハイのみでなく、ビール類・スピリッツを中心に酒類全般に精通。



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