~オリジナルビールができるまで~
工場見学 in 佐賀アームストロング醸造所
ビール造りで欠かせないのが“大麦”。実は佐賀は大麦の生産量が日本一だということをご存じでしょうか?
そんな佐賀で2020年からクラフトビール造りを手掛けられているのがコトブキテクレックス様です。
今回はコトブキテクレックス様の「佐賀アームストロング醸造所」ヘッドブルワーである伊藤様にビールが出来上がるまでの醸造工程を解説いただきました。
更にはドリンクジャパンで制作したオリジナルビールについてもお話いただきます。
クラフトビール醸造方法についてご紹介
●精麦
ビールの原料を“モルト”と言います。
この工程ですが、通常はモルト会社がやるもので、ほとんどのブルワリーは輸入モルトを使っています。
ですので、100%国産麦芽、100%自社麦芽、しかも生産量の全てのビールを自社製造でやっているところはおそらく弊社だけです。
まず精麦機の中に水を張り、“浸麦” という乾燥した麦に水を吸わせ、発芽させる作業を行います。
発芽の目的は“糖化酵素(アミラーゼ)”を作るためです。
適度な温度でゆっくり発芽させることで、ビールの醸造時にでんぷんを分解し、糖をつくるために必要なアミラーゼの生成を促します。
大体3日から5日ぐらいかけて発芽させ、麦の中の4分の3ぐらいまで芽が伸びたところで発芽を止めます。その際、熱風発生器で熱い空気を送り込んで乾燥させるのですが、その間の湿度調整がとても重要です。
●焙燥
次に“焙燥”という作業を行います。
焙燥というのは表面を少し焦がすことです。そうすることでビールの独特の香ばしさや、色をつけることができます。
例えばすごく濃い色のモルトを作ると、黒ビールに使うようなモルトができます。
国内での前例がほとんどなく、一番難しかった工程です。
●貯蔵
こうして出来上がったモルトは冷蔵倉庫に保管します。害虫やカビの発生を防ぐために低温、低湿度の環境で保管し、概ね1年半以内に使い切るようにしています。
●破砕
仕込みの直前にモルトをモルトミルという機械を使って破砕します。
ビールのモルトの場合、粉にするというよりも外側の被殻を軽く割ってやるような感じですね。
この被殻が実は、後ほど大きな役割を果たすので、これはなるべく大きく割ってやります。
●糖化・ろ過
“糖化”の作業では、まず、先ほどの粗く引いたモルトをお湯につけ、“マッシュ”というドロドロのおかゆのような状態にします。
先ほどのアミラーゼなどの酵素が最も働く温度帯をうまくキープしてやることで、でんぷんが糖(=麦芽糖)に変わっていきます。
次に“ろ過”作業に移ります。
マッシュを絞って麦汁を取り出し、今度は上からもう1回戻すというようにグルグル循環させてやると、最初はドロドロの白く濁った液だったのがだんだん澄んだ綺麗な麦汁になります。
●煮沸
ここから煮沸という工程に入ります。
ここでホップを投入して“苦みと香り”をつけます。
ホップの役割は三つ。
① 苦味をつけること
② 香りをつけること
③ 泡持ちを良くすること
という役割があり、昔は殺菌効果があるので消毒の意味もありました。
それが終わると、今度は“ワールプール”という工程です。
麦汁をタンクの縁にそって勢いよく流し込み、中に渦を作ります。
それを沈殿させることで、先程入れたホップのカスや、タンパク質の凝固した物質といった濁りが真ん中に小山みたいに体積します。
この沈殿物を除去してやることで、クリアな麦汁を取り出すという仕組みになっています。
●冷却
その後、冷水で100℃から一気に20℃まで冷やします。
急速に冷やすのは“雑菌の繁殖を減らすため”です。
ここからは雑菌汚染との戦いです。煮沸しているときはいいのですが、それが冷めてきて、70℃を切ると雑菌がいつでも繁殖してきます。ここからは出来るだけ空気にも触れさせないようにしています。
●発酵
殺菌後、発酵タンクに入れます。
他のブルワリーではほとんど使ってないのですが、弊社では代表の松本のこだわりで、“開放式発酵タンク”という昔ながらの方法で作っています。
本場ヨーロッパは日本に比べ、乾燥していて気温も低いので、空気中の雑菌の数が全然違います。ですので、日本で同じことをするとリスクが高く、今はもうほとんどのメーカーがこういった密閉式のタンクで作っています。
酵母を入れて適切な温度管理を行い、およそ3日から1週間ほどで発酵工程を終えます。この間に麦汁の中の糖分がアルコールと二酸化炭素に置き換わっていきます。
●貯蔵・熟成
発酵を終え、タンクの底に沈んだ酵母を滓(おり)よけして、上澄みの綺麗な麦汁だけを取り出します。
こちらを、熟成タンクに入れていきます。
熟成タンクに入れて大体のもので3週間ぐらい、通常で1ヶ月ほど熟成させるとビールの完成です。
~「DJ PALE ALE」ってどんなビール?~
ペールエールはベーシックなビールなので、バランスがよく一番日常的に長く飲める、飲み飽きないビールです。
イギリスのパブだと、キンキンに冷やさず炭酸も弱めで、ゆっくりといつまでも飲んでいられるビールだと言われています。
日本ではビールは冷やして飲むものという認識が強いのでしっかりと冷やしますし、炭酸もつけます。
けれども飲み飽きなさ、一番日常的に飲めるビールをコンセプトにしています。